武蔵野美術大学 美術館・図書館イメージライブラリー

第31回イメージライブラリー映像講座
「セルロイドの夢―フィルムで観るNFBアニメーション」の記録

この講座について

イメージライブラリーではNFB(National Film Board of Canada、カナダ国立映画制作庁)の映像作品を16mmフィルムで数多く収蔵しています。*1 NFBは1939年に設立されたカナダの国立映画制作機関で、広い国土に分散する多様な文化背景を持つ国民に向けてアニメーションやドキュメンタリーなど様々なジャンルの映画制作を行っています。1941年にNFBに開設されたアニメーションスタジオでは、ノーマン・マクラレンをはじめとする映像作家たちが様々なアニメーション作品を制作し、アニメーション表現の可能性を広げました。この講座では、収蔵作品からピックアップしたNFBのアニメーション作品をフィルム上映し、視覚伝達デザイン学科の西本企良教授に解説して頂きました。

*1 1999年に静岡県立中央図書館より移管を受け、カナダ大使館の許諾の元に所蔵。

フィルムと映写機の原理

図1

 今日は普段皆さんが目にすることの無い、フィルムというメディアを使ってのアニメーション上映会ということで、私が簡単な解説をすることになりました。宜しくお願いします。 まず、フィルムの原理というか、映画の原理のところから始めます。皆さんはフィルム自体は知っていると思うんですが、片側にパーフォレーションがあって、その横に画像がある、というものです。(図2)今はもうデジタルカメラもありますので、フィルムを見る機会は大変少ないですが、昔は皆フィルムでした。このパーフォレーションは何かというと、これに映写機の歯車が噛み合わさってくるっと回転するんですね。すると一コマ分カクンと回るんですね。そうやって連続してグルグル回って、歯車側はカタッカタッと間欠運動をして一コマずつ送って止まる、というような仕組みになっています。

 次に映写機というのは大体こういう形(図1)ですけれど、フィルムが前の方から後ろの方へ流れてくる。映写機のランプの前に掻き落としの爪があって、ここでカタカタカタってフィルムを掻き落とすんです。先ほどの歯車と同じような感じで一コマずつ落としていきます。そのため上下にフィルムのたるみがあります。フィルムが一旦止まった時にシャッターが開いて画像を映すと、次にまたシャッターが画像を隠した時に次のコマをカタッと送るというような感じで見せていきます。音はここ(図1-①)で拾うんですけれど、ここがフィルムとデジタルの違いで、光を電気信号に変えて音をスピーカーへ送るんです。*2 だから画と音の再生する位置が少しずれています。このような映写機の原理は大型の35mm映写機もそうです。今日の上映会のタイトルは“セルロイドの夢”となっていますが、昔はフィルムがセルロイドで作られていました。それが可燃性で火事が多発したので、燃えにくいトリアセテートに変わっていきました。

 今日はアニメーションを上映しますので、アニメーションの撮影台のお話をします。撮影台の上方に上下するようなカメラがあって、撮影台の上にセルと背景を置いていきます。その両側から照明を当てて、クランクというハンドルを回してカメラを上下させたりしながら撮影していきます。それからこのセルを置く台座も、位置が前後左右に移動したり、回転したり出来るようになっています。アニメーションのカメラはズームが付いていなくて、トラックアップやトラックバックという、カメラ自体が近づいたり離れたりする方法でアップやロングを撮影します。今はもうフィルムで撮影すること自体が非常に稀になってきていますが、昔はこういう風に撮影していました。

*2 エキサイターランプの光がサウンドレンズで集光され、フィルムのサウンドトラック部分の波形を通過したのちサウンドドラムで 電気信号に変換される。

ノーマン・マクラレンとNFB

 フィルムの特性を使ったアニメーションについては、ノーマン・マクラレンという人が特に研究していろいろなバリエーションの作品を作り、フィルムでのアニメーションの可能性を広げました。この人は元々スコットランドの人ですが、大学在学中から実験的な作品を作っていて、当時イギリスの郵政局映画部にいたジョン・グリアスンという人の目に留まり、「ちょっと仕事をやらないか」と誘われました。マクラレンは卒業してからニューヨークへ行きましたが、グリアスンがカナダのNFB(カナダ国立映画制作庁)に局長として招かれて行った時、マクラレンをNFBに呼んでアニメーション部門を作らせたという経緯があります。
 NFBとはNational Film Board of Canada、カナダ国立映画制作庁という名称です。カナダはケベックというフランス語圏と他の英語圏があって、それからイヌイットの人たち、いわゆる先住民族の人たちもいて、いろいろな文化が混ざっているんです。そういうところで、言語ではなく、視覚的な言語である映画を使ってコミュニケーションを図り、様々な啓蒙活動を行おうという目的で作られた機関です。ノーマン・マクラレンはそこで、予算はあまり無いけれども、とてもユニークでアニメーションとしても面白い、特にフィルムというメディアをいろいろな側面から考えた作品を作った人です。
 今日最初に観てもらうのはマクラレンのそういう作品なんですが、彼は本当にいろいろな作品を作っています。マクラレンにはいまだに信奉者というか崇拝者というような人たちが結構います。マクラレンが作った作品の中で有名なもののひとつにシネカリグラフという技法でフィルムに直接描いて作った作品があります。フィルムに直接描くというのは、台の上にフィルムを置いて、ルーペで拡大しながら直接描いていくことです。とてもシンプルな形が動く作品もありましたし、絵具をザーッと塗りつけていくような、ものすごく抽象的で動きがある作品も作っています。

図2

 今から観てもらう『垂直線』はフィルムの特性を使った作品で、定規でフィルムに縦に傷を入れて動きを作ったものです。(図2) フィルムの原理から見ていくと、映写機のレンズに光が通過する穴がありますよね。その奥をフィルムが流れていく。
 スロー再生で見ますと、シャッターが回って、シャッターで光が通過する穴が隠れた時に一コマずつフィルムが送られている。だからここにあるのは常に止まった画像なんです。止まった画像を次々に見せていくというような仕組みです。今から観てもらう作品はフィルムに傷を付けたものですが、定規で斜めに傷をつけるとどうなるか、ということをしています。一本の線がだんだん二本に分かれていくのをフィルムに描いていく。そして、その後線が四本に分かれていく、というような動きの連続です。縦に長いフィルムに線を引いていくことでそのようなイメージを描いている。これはフィルムじゃないと出来ないことですよね。マクラレンの場合は、どこでどういう風に線が分かれるかというのを綿密に計算して、計画しています。絵コンテの代わりに表を作成して、線を何秒、何フレームかということを描いていき、その後にそれを基にフィルムに手描きしていく。今からフィルムで観てもらいたいと思います。

<『垂直線』上映>

 フィルムに縦に傷を入れただけでこれだけの作品が出来るという、とてもミニマルな作品です。次に観てもらう『モザイク』という作品では点が動くんです。これはどういう風にやっているかというと、今フィルムに縦に傷を入れた『垂直線』というのがありました。それを今度はオプティカル処理という、現像所で一コマ一コマを90度横向きにして再び一コマ一コマ焼いていくという工程を行います。そういう形で縦に線を引いたものを横にした『水平線』という作品を作っています。さらにその『垂直線』と『水平線』の技法を合わせて、オプティカル処理でその交わった交点だけを抜き出して作ったのが『モザイク』という作品です。フィルムを今セッティングしていますので、その前に『モザイク』のメイキングを観てもらいたいと思います。これはサイレントです。どういう風に作品が作られたかというのを紹介しています。

<『モザイク(メイキング)』上映>

図3

 本来ならこういう形(図3-①)に見えるんです。マクラレンはスコットランド生まれなので、スコットランドのあのタータンチェックを連想します。まずは垂直線でこういう動きを作る(図3-②)。今観た『垂直線』ですね。今度は水平線でこういう動きを作る(図3-③)。それを合わせて交点だけを残すとこういう風になる(図3-④)という仕掛けです。

<『モザイク』上映>

 次に見てもらうのもやはりマクラレンの作品ですが、今度はオーバーラップという、一度撮影したものをあるコマからあるコマまで一旦巻き戻して重ね焼きするという技法を使ってアニメーションを作っています。重ね焼きというとマルセル・デュシャンや未来派の作品でも軌跡を使って動きの感覚を表現するというのがありましたけれど、写真でもジュール・マレーなどがいて、そうした写真の影響もあります。それらは動かない平面の絵ですが、映画で軌跡を使った場合にどういう風になるのか、という作品です。これは、人物の真横から光を当てて、輪郭線が際立つようにして動きを撮影し、その素材をまたオプティカル処理して現像所でダブらせながら焼きつけるという方法で作っています。その焼きつけ方もフレーム単位で計算してやっているわけです。それが『パ・ドゥ・ドゥ』というこれから観てもらう作品なんですが、そのテスト撮影がありますのでこれを先に観てもらいます。これもやはりサイレントです。

<『パ・ドゥ・ドゥ(テスト)』上映>

 撮影する時は普通に動いてもらって、その後に現像所の方で何フレームかおきにダブらせるというオプティカル処理をします。その何フレームおき、というフレームの間隔が線の密度になってくるんですが、そのようにして重なった残像を表現します。マクラレンはこういう一見遊びみたいに見えるいろいろな実験を仲間と一緒にやっています。マクラレンの凄いところは実験だけで終わらないで、それを後に非常にエンターテイメント性のあるひとつの作品として仕上げることです。後で重ねることを前提に動いてもらい、重ね方をいろいろ工夫して、どれくらいのコマ数で重ねるかなどを考える。では、『パ・ド・ドゥ』を見てもらいます。

<『パ・ドゥ・ドゥ』上映>

ライアン・ラーキン『シリンクス』

 次からはマクラレン以外のNFBの作家たちの作品も観てもらいたいと思います。ノーマン・マクラレンは非常にユニークな作品を作りましたが、同時に後継者である若い人たちにも実験的な雰囲気の中で自由に作れる環境を与えて、非常に面白いユニークな作品をどんどん作らせました。今ではカナダのアニメーションは世界的に有名になって、NFBの名前は世界中に知られるようになりました。

 NFBでマクラレンのいわゆる弟子という形で、とても注目された一人にライアン・ラーキンという人がいました。当時二十歳そこそこでとても若かった。今から観てもらうのは『シリンクス』という、とても短い作品です。これは木炭で描いた画を一コマ一コマ動かしています。『シリンクス』は最初に作った作品で、その後『ウォーキング』という作品で彼はとても有名になりました。ストーリーらしいストーリーはないんですが、街中を歩く人たち、あるいは走っている人たちの群像をカラーインクで描いていて、それがとても綺麗なカラーなんですね。ちょっと詩的な作品です。その後の『ストリート・ミュージック』という作品も、辻音楽師というか、街角で若い人たちが楽器を持って弾いている、その音楽に合わせたアニメーションで、これも動きや色彩がとっても綺麗な作品です。これもやはりカラーインクの鮮やかさというのを見せていて、フィルムで撮影したカラーインクがとても綺麗な作品です。彼はこうした作品を作ったんですが、その後消息がちょっと途絶えてしまいました。当時はヒッピー文化がありましたが、彼もドラッグとかそういうものに行ってしまって、あんまりうまくいかなくなった。その後ちょっと立ち直ったように見えたんですが、数年前に残念ながら亡くなりました。でもNFBにいた当時はとても期待された作家でした。
 この『シリンクス』というのは、ギリシャ神話のシリンクスという妖精と、シリンクスに恋するパーンという半分獣の形をした神様の物語です。パーンがシリンクスを捕まえようとすると、シリンクスが川辺に生える葦に変身してしまう。それでパーンは嘆き悲しむんだけれども、シリンクスが変身した葦で笛を作って、いわゆるパンフルートですよね、それによって物悲しい曲を奏でたという話です。“パニック”という言葉はこのパーンから来ているそうです。

<『シリンクス』上映>

 この作品はパステルメソッドといって、消しながら描き足して撮影して、それを消してまた描き足すというような方法で撮影しています。

イブリン・ランバート『欲張りブルージェイ』

 次はイブリン・ランバートという人です。イブリン・ランバートはノーマン・マクラレンの弟子、というより共同作業者です。先ほどの『垂直線』や『モザイク』のような作品を共同で制作しています。彼女自身も短いフィルムのアニメーション作品を沢山作っています。イブリン・ランバートの切り紙アニメーションはキャラクターの切り抜きの技法がとてもユニークで、キャラクターの各部分をパーツに分けるんだけれども、黒い背景で、関節とかそういうものはある程度省略するというやり方でやっています。今から観てもらうのは『欲張りブルージェイ』という作品です。なんでもかんでも自分のものにしたがるブルージェイ、アオカケスがいて、太陽までも自分の宝物にしてしまったので世界が真っ暗になってしまうというお話です。いわゆる環境問題にテーマが置かれている作品です。当時はいろいろな化学物質による汚染が問題になった時代です。そういった意味合いも含めてこの作品を観れば、当時の状況も併せて面白く観れるんじゃないかと思います。

<『欲張りブルージェイ』上映>

 こういう風に切り抜いた形を動かしながら撮っていくのはカットアウト技法と言ってヨーロッパではかなり使われている技法です。こういう技法だと一人で出来るんです。逆に言うと共同作業が出来ない。撮影台に向かって切り抜いたものをちょっとずつ動かして、一コマずつ撮影していくのは一人じゃないと出来ないんです。ブルージェイの羽の部分の動きを見てもらうと分かるんですが、途中で違う形のパーツに置き換えているんですね。いきなり置き換える。静止した一コマだけ見ると変な形のポーズなんだけど、瞬間的な形だとこれでいいんです。

キャロライン・リーフ『がちょうと結婚したふくろう』

 次はライアン・ラーキンと同じように若手のホープとして注目されたキャロライン・リーフという女性作家の作品を観て行きます。この人もやはり若くして作品を作り始めて、『ピーターと狼』という作品が最初の作品だったと思うんですが、この人の場合、最初は砂を使ってアニメーションを作っていました。『ピーターと狼』は反射光というか、普通に砂を置いて横から光を当てて撮っていますが、今から観てもらう『がちょうと結婚したふくろう』という作品は、砂を置いて、それを透過光といって裏側から光を当てながら撮影する方法で作っています。そうすると砂の部分が黒くなりますよね。それでちょっとずつ砂を移動させて形を作り、ちょっとずつ消しながらまた付け足すとか、フォルムをどんどん作っていってそれを撮影していくという方法です。メタモルフォーゼというか、形がぼわーっと変わっていくというのがこの技法の特色になると思います。透過光で撮影すると砂が薄くなっているところは透けて見えますから、作品に独特の味が出ます。また、キャロライン・リーフは敷き詰めた砂を取っていってその抜けた形のフォルムを利用したり、とてもシンプルですが砂や透過光の性質を上手く使った作品作りをしています。
 キャロライン・リーフはこの後『変身』という作品を作っています。これはカフカの小説を原作にした作品で、極端なデフォルメが作品の特徴なんですが、山村浩二さんのカフカを原作にした『田舎医者』のデフォルメにも通じるところがあると思います。その後の『ストリート』という作品は、オイルペイントという、絵の具にオイルをちょっと混ぜて乾きにくくした状態で砂と同じように透過光で撮影する、ということをやっています。砂の場合とどういう風に違ってくるかというと、これだとカラーの作品ができるようになる。だいぶ後になりますが、『姉妹』という作品では、フィルムを直接引っ掻いて形を作っています。先ほどのマクラレンのシネカリグラフ『垂直線』で説明したのと同じ方法です。とても大変な作業だと思うんですが、フィルムを引っ掻いて形を作っていく方法で作品を作っています。キャロライン・リーフもフィルムでいろいろな技法の可能性を探った人です。次に上映する『がちょうと結婚したふくろう』はイヌイットの歌だと思いますが、民話を基にした作品です。がちょうとふくろうが結婚したらどうなるのかという、ちょっとしたユーモアと物悲しさがある作品です。

<『がちょうと結婚したふくろう』上映>

 この作品は砂という素材の性質をよく考えて作られています。日本でも結構、学生が砂を使ってアニメーション作品を作っていますが、こういう砂や粘土を使ったりするのは非常にとっつきやすいんだけれども、その分ちゃんとしたものを作ろうとすると大変難しい。今観てもらったのはかなりシンプルな作品ですが、シンプルな中で動きというものがとても重要になってきます。

Clorinda Warny,Suzanne Geruais,Lina Gagnon『ビギニングス』

 次に観てもらうのは『ビギニングス』という作品です。この作品に関しては作者のことがあまりよく分かりません。昔から『ビギニングス』という作品はあったんですが、作者についての情報が無くて、ちょっとよく分からないんです。ただ三人の共同監督だったという話を聞きます。風景が人の形に見えてくる、そういうことってありますよね。広大な自然の中で神話的なイメージが湧いてくるという、そういう感じのアニメーションです。『シリンクス』という作品もありましが、これはパステルメソッドという技法を使っていまして、描いて撮影し、それをオーバーラップさせながらちょっとずつ変えていく。そうするとふわーっと変化していくようなイメージが得られます。

<『ビギニングス』上映>

 フィルムがかなり変色して赤くなっていますが、おそらく昔は相当綺麗だったと思います。私が以前観た時も既に赤っぽくなっていました。ただこれはDVDで発売されていませんので、このフィルムでしか観ることが出来ません。*3 だから今回是非観て頂きたかったんです。先ほどこの作品の技法はパステルメソッドだと言いましたが、ライアン・ラーキンの『シリンクス』と同じく確かにパステルメソッドですけれども、私の記憶違いがあって今の『ビギニングス』はかなり細かく中割りを描いていますね。大変な労作だと思います。ただあれだけ微妙に変化させるのはどうやったのか今ひとつ分からないです。コンピューターのようなかなりの正確さで微妙に動かしています。

*3 2010年に『ビギニングス』を収録したDVD「Coffret annecy, 50é anniversaire」(アヌシー映画祭受賞作品集)が発売された。

イシュ・パテル『パラダイス』

 次はイシュ・パテルという人。彼もNFBで有名な作家ですね。この人はインドで生まれたという話を聞きますが、カナダに行ってアニメーションを作りました。最初に作ったのは『太陽と月のお話(この世を訪れた死の神々)』“How Death Came to Earth?”というタイトルで、どうやって死が地上にやってきたかということを描いた、切り抜きのアニメーションです。その後に『ビーズ・ゲーム』というカラフルなビーズ玉を使った作品や、『パースペクトラム』という、マクラレンの『パ・ドゥ・ドゥ』と同じようにオーバーラップの方法を使った幾何的でとても面白いアニメーションを作りました。『パースペクトラム』の場合は現像所のオプティカル処理だけではなく、フィルムを巻き戻して撮影する方法を使っていると思います。当時はまだCGやコンピューターを使ったアニメーションというのは一般的ではありませんでしたので、これを手描きでやっていた。それから『死後の世界』、これは油土という、カラフルな油粘土を透過光で撮影したものです。NFBですから啓蒙的な作品も作っていて、ここでは見せませんが『妊娠と避妊について』というような教育映画も作っています。アニメーターは結構器用ですから、いろいろな技法でいろいろなテーマのもとでアニメーションを作っています。今日観てもらうのは『パラダイス』という作品です。先にメイキングを観てもらいます。

(『イシュ・パテル「パラダイス」メイキング』上映)

 アニメーションってとても大変な労力と時間がかかるんです。コンピューターになっても基本的には手間暇をかけないと良い作品は多分出来ない。ということで本編を上映します。

<『パラダイス』上映>

 音楽が効果的でとても神秘的です。予定の作品はこれで全部観てもらいましたが、マクラレンやNFBをはじめとして世界中のいろんな人がフィルムというメディア上でどんなことが出来るかということを、いろいろ試行錯誤しながら面白い作品を作って来たんですね。だから皆さんに観てもらって、自分もフィルムでやろうという風に思うのではなくて、おそらくフィルムの時代はもう完全に終わるので、新しいメディアで自分たちが何が出来るかということを考えた方がいいと思います。マクラレンも今の時代に生きていたらおそらくコンピューターを使っていた。フィルム自体がとても面白いものなのでそれを使って作品を作るのも勿論良いけれど、今フィルムの作品を観て、フィルムの表面的な面白さを学ぶということではなくて、この人たちがフィルムという存在をどういう風に考えていろいろ工夫をしたか、そういう姿勢を学ぶべきだと思います。

(2009年6月29日収録。掲載に当たって内容の一部を割愛・編集しております。名称・役職名等は当時のものです。)