妻子をバカンスに送りだした大学教授リチャード・ウォンリーは、帰り道、ショーウィンドウに飾られた美人画に見とれていた。そして翌日、同じ場所で彼は，その絵から抜け出てきたかのような美しい女性・アリスと出会う。彼女の部屋に招かれたウォンリーだが、そこに突然現れたアリスのパトロンに襲われ、咄嗟に手にしたハサミでその男を殺してしまう。正当防衛であるとは言え、世間に醜聞が伝わることは避けたい。そう考えたウォンリーとアリスは、警察に気づかれないように死体を遺棄する計画を実行する。しかしそれ以来ウォンリーは、事件発覚の不安や周囲の人々への疑心暗鬼に苛まれる悪夢のような日々を過ごすことになるのであった……。 フランスの映画批評家ニーノ・フランクによって「フィルム・ノワール」と名付けられた、40年代から50年代にかけてのアメリカ犯罪映画を代表する作品。男を破滅へと導くファム・ファタールの登場や、虚実が入り交じった物語展開、陰影を際立たせた映像設計、そして様々なショットに見出される「メタ映画」的な自己言及性などが、その特徴として挙げられる。

作品キーワード：フィルム・ノワール，ファム・ファタール