かつては自らのものであった豪邸を目の前にして、オープンカフェの一席でひとりの中年男性が自分の半生を書き記し始める。その回想録の題名は「とらんぷ譚（ものがたり）」??少年時代、彼は家族が経営する雑貨店から金を盗んだ罰として、夕食を抜かされる。しかしその食事に毒きのこが入っていたため、彼以外の11人の家族全員が死んでしまう。孤児となった彼は、レストランやホテルのボーイなど様々な職業を経験しながら大人に成長し、モナコへと渡る。やがてペテン師となりモンテ・カルロのカジノで荒稼ぎをするようになった彼は、ある夜、戦場で彼を救うために片腕をなくした命の恩人シャルボニエと再会。シャルボニエの影響で、彼は真の賭博の魅力に取り付かれていく。 劇作家・俳優としても有名なサシャ・ギトリが自作「ペテン師の回想録」を映画用に脚色し、監督と主演を兼任したコメディ/Comedy映画。ヌーヴェル・ヴァーグの作家たちにも多大な影響を与えた彼の代表作で、ナレーションで進行する映画の先駆的な作品である。特に回想部分には台詞がほとんどなく、途切れることのない軽妙なナレーションとサイレント映画を彷彿とさせる演技、軽快なテンポによってストーリーが進行していく。さらに本作にはクレジットタイトルもなく、スタッフとキャストが映画の冒頭に登場し、ギトリのナレーションによって仕事ぶりが紹介されるという趣向になっている。

作品キーワード：モノローグ，葬式，エレベーター・ボーイ，金時計，宝石泥棒，ポーカー，ルーレット，ギャンブル，変装，詐欺師