世界的なヴァイオリン奏者ジェロームは、今は引退して娘のアニエスと共に田舎で静かな余生を送っていた。そんな彼の元には弟子入りを希望する音楽家が多く、ミシェル・クレールもその中の一人だった。ミシェルは巧みにアニエスに近づき、ジェロームの前で演奏する機会を得る。しかし、ジェロームはミシェルを天才と認めた上で、その才能と野心から彼がやがて破滅すると断言する。そして、アニエスとの交際も固く拒絶した。ミシェルは怒りと失意の中で、下宿先の女中イレーヌと結ばれ去っていく。8年後、アニエスは実業家ロベールと結婚し、裕福ながらも愛のない生活を送っていた。一方ミシェルは裏街の映画館の楽士として生活を立てていた。そんなある日、二人は偶然再会する。未だミシェルへの想いを忘れられないアニエスは、夫に頼んでミシェルを主役とした演奏会を催すが、既に音楽への情熱を失っていたミシェルは演奏会に泥酔して現われ、一曲も演奏することはなかった。ミシェルはアニエスの腕の中で、これまでアニエスを忘れたことがなかったことを告白する。二人は駆け落ちを決意するが、それを知ったミシェルの恋人イレーヌの自殺未遂によって計画は頓挫してしまう。それからさらに8年が経った。愛人との生活を選んだ夫に離婚を迫られて実家に戻ったアニエスは、そこでミシェルと再会する。二人は今度こそ新たな旅立ちを誓うが、愛人との破局を迎えたロベールがアニエスに復縁を迫った。ミシェルの気持ちを確認するため彼を訪ねたアニエスが目にしたのは、酒と煙草のために宿のマダムの機嫌を取っているミシェルの姿だった。アニエスは絶望に打ちひしがれ、マダムの通報で駆けつけた夫の車に乗り込むのだった。