フレデリック・ワイズマン監督はアラバマ聾盲学校を舞台に「Deaf and Blind」シリーズの4部作（『視覚障害』『聴覚障害』『多重障害』『適応と仕事』）を制作した。アラバマ聾盲学校はアメリカでも有数の障害者のための教育機関であり、聾学校、盲学校、多機能障害者のためのヘレン・ケラー・スクールや職業訓練学校などが併設されている。本作はアラバマ聾学校に通う学生たちの日常を捉えた作品である。この学校では3歳から高校生までの聴覚に障害をもつ生徒が寄宿生活を送りながら学んでいる。幼児クラスでは、教師がマン・ツー・マンまたは3、4人の生徒に1人の割合で子供に手話を教え、時には生徒の顔を触り発声のコツを覚えさせようとしている。高校生に対しては心理カウンセリングや日常生活の訓練、職業訓練も行われている。作品の中盤で、カメラはある少年と母親、校長、女性教師のやりとりを丹念に捉えている。少年が親に見捨てられたと感じている事、父親が息子が聾者であることを受け入れられずにいる事、手話を知らない母親が彼と直接コミュニケーションを取れない事など、少年が抱える様々な問題が明らかになっていく。しかし、こういった問題は教師たちにとって特別なものではない。映画は、生徒たちが抱える様々な問題を彼らがねばり強く解決しようと取り組む姿をも捉えている。