町の有力者の娘であるリーナは、社交界の花形であるジョニー・アイガースと知り合い、次第に彼に惹かれていった。しかしジョニーの身持ちの悪さを知る両親は二人の交際を快く思わない。駆け落ちしたリーナとジョニーはついに両親の反対を押し切って結婚してしまう。しかし新婚旅行から帰ってくると、リーナはジョニーが借金をしてまで立派な新居を用意した挙句、無一文なのに仕事をする意欲もないことを知り愕然とする。ようやく結婚を許した父が祝いとして贈ってくれた年代物の椅子までも、ジョニーはリーナに断りなく質屋に入れてしまう始末だった。財産目当てで結婚したのでは、とジョニーに不信感を抱くようになるリーナ。そんな折、ジョニーの土地開発計画に投資していた友人が不審な死を遂げ、リーナはジョニーに対して疑惑を抱く。さらに知り合いの推理小説家にしつこく毒殺について尋ねるジョニーの姿を見て、リーナは保険金目当てに殺されるのでは、と怯えるようになるのだった…。 原作はフランシス・アイルズの『犯行以前』。ロマンチックな恋愛模様から一転、夫への疑念に苛まれていく新妻の姿を描いたサスペンス映画。ボードゲームで綴った“MURDER（殺人）”の文字と断崖のフラッシュ・バックを重ね合わせたシーンでは、被害妄想に駆られていく主人公の心理を巧みに描写している。毒殺を予告するかのように、暗闇の中、リーナのもとへと運ばれるミルクのグラスが不気味に白く輝くのも、恐怖を駆り立る秀逸なシーンである。

作品キーワード：ダンス・パーティ，詐欺師，横領