本作は本土返還前の沖縄を撮影したドキュメンタリーである。沖縄の風景やそこに生きる人々の日常を鋭い視点で切り取り、それらを多層的に繋ぎ合わせることによって沖縄という島全体が奏でる不協和音を捉えている。 米軍基地が島々を包囲するように点在する、戦後23年を経た沖縄。そこには米軍事支配と向き合いながら生きる人々の日常がある。本土から沖縄を訪れる観光客は増え、彼らを乗せた観光バスのガイド嬢は「沖縄を返せ」の歌を歌う。ひめゆりの塔には観光客が集うが、その丘の下にあるひめゆり洞穴の中には未だ銃弾が錆びついて残っている。コザ市で行われた基地撤去反対デモでは、基地によって生きる人々が生活を守るために声を上げる。明け方に路上で泣く娼婦の姿。石垣島のパイン農園で働く貧しい労働者たちと、その缶詰工場で働く台湾からの出稼ぎ女工たち。嘉手納基地からは毎日ベトナムに向けて爆撃機B52が飛び立つ。伊江島では、米軍基地の敷地内に闘争小屋を建て、土地奪回の闘いを続ける人々がいる。 タイトルの「沖縄列島」とは、様々な島からなる沖縄を、日米間で引き裂かれた痛みと様々な社会問題を共有して連なる列島として捉えようとする制作者の意志によって付けられたものである。