中国内モンゴル自治区西部の草原で、牧畜をしながら夫と2人の幼い子供と暮らすトゥヤー。夫のバータルは3年前に井戸を掘ろうとして事故に遭い、下半身不随となっていた。トゥヤーは家族を養うため、たった一人で100頭もの羊の世話をし、日に何度も30キロの道のりを歩いて水を汲みに行く毎日を送っていた。過酷な労働に耐えるトゥヤーを見かねたバータルは、自分と離婚して別の男と再婚するよう説得するが、彼女は承知しようとしなかった。そんなある日、トゥヤーは馬車の下敷きになった隣人センゲーを助けようとして怪我を負ってしまう。重労働ができない体になってしまったトゥヤーは遂に離婚を決意する。しかしそれは、バータルと二人の息子と共に暮らし養ってくれる再婚相手を探すためだった。離婚したトゥヤーの元には、次から次へと求婚相手が訪れるようになる。その中の一人ボロルは、結婚の条件としてバータルを養護施設に入れることを求めた。苦渋の末トゥヤーはそれを受け入れるが、バータルは施設に入ったその夜自殺を図る。命は取り留めたものの、彼女はバータルを見捨てることができずボロルとの結婚を取りやめる。そんな中、それまでの成り行きを見守っていた隣人センゲーが、全てを受け入れ彼女に求婚する。センゲーとの結婚式の日、トゥヤーは「父親が二人いる」とからかわれ喧嘩を始める息子や、酒に酔って花婿に絡み出すバータルを残して祝いの席を抜け出し、たった一人涙を流すのだった。 第57回ベルリン国際映画祭グランプリ受賞作品。