哲学者バークリーの言葉「Esse est percipi」（存在することは知覚されることである）を元に劇作家サミュエル・ベケットが映像化を前提に脚本を書き、アラン・シュナイダーが監督、晩年のバスター・キートンが主役を演じた。 大きく見開かれた目のアップからはじまり、カメラはコートを着た男の後ろ姿をとらえる。男は顔を見せないよう布で覆い、執拗に追いかけるカメラから逃げるようにアパートに入って行く。部屋に入ると、男の視点と男を追うカメラの視点が交互に映し出される。ペットの視線や壁にかかっている絵画の顔、鏡に姿が映ることに怯える男は、カメラに顔が映らないように動き回りながら、ペットを部屋から追い出し、絵を破り捨て、鏡には布を被せる。疲れ果て、椅子に座り込む男の隙をついてカメラが正面に回り込むと…。 無表情な喜劇役者で知られるバスター・キートンの恐怖に満ちた表情が珍しい作品。