1941年、ドイツ占領下のフランス。ある田舎町に老人とその姪がふたりだけで暮らす家があった。その年の冬、空き部屋を探しているというドイツ軍兵士が家を訪れ、その数日後に青年将校が家の二階に同居することとなった。ヴェルナー・フォン・エーブルナックと名乗る青年将校は音楽家であり、フランスが生み出した芸術に深い尊敬と憧れの念を持っていた。彼は自分のフランスへの尊敬の感情について毎晩ふたりに語りかけるのだが、彼らは決して口を開こうとせず、頑なに沈黙を守る。一方のヴェルナーも、敵軍の将校に対し沈黙によって抵抗の意を露わにするふたりの愛国心に感銘を受け、その姿勢を尊重しようと紳士的にふるまう。やがて春になり、ヴェルナーは休暇を利用して憧れのパリを訪れる。しかし旅から戻った彼の態度はふたりに対して極度によそよそしいものとなった。彼はフランスのナチス軍事本部で、ナチスによるユダヤ人収容所での大量虐殺の事実を知ったのだった。 ジャン＝ピエール・メルヴィル監督の長編第1作。第二次世界大戦中、ドイツ占領下のフランスで秘密裏に出版されたヴェルコールによる同名小説に感銘を受けたメルヴィルが、戦後復員後に立ちあげた自らのプロダクションで制作した。低予算、ロケ撮影、無名の俳優の起用、少人数のスタッフといった撮影スタイルは後のヌーヴェル・ヴァーグに大きな影響を与えた。