イーゼルに向かい、インクでピエロの絵を描き始めたアニメーターのマックス。1匹のハエがそれを邪魔する。マックスはハエたたきで退治しようとするが、紙に描いた道化師ココを叩いてしまう始末。ココも紙の中で必死にペンを振り回し、ハエ退治を試みるが、空振りばかり。ついにココは、ハゲ頭の男の絵を描き、そのピカピカ光る頭にハエを止まらせるという名案を思いつく。 道化師ココが活躍する、フライシャー最初期の「インク壷」シリーズの1作。この頃フライシャー兄弟はまだ独立しておらず、ジョン・ランドルフ・ブレイが設立したブレイ・スタジオでこの作品を制作した。ココを描き出すアニメーターは実写で（監督のマックス・フライシャーが演じている）、紙の上のココは、フライシャー自身が開発したロトスコープという技法のアニメーションで描かれている。ロトスコープとは実写で撮影された映像を1コマずつトレースしていく技法で、手書きの絵にリアルな動きを作り出すことが出来る。1919年に描かれたモノクロの素朴なピエロが紡ぐなめらかな動きには、現代でも驚かされる。