とある映画の撮影初日。ヴロツワフ中央駅を走り出した列車に轢かれて事故死する男の役を演じていたのは、監督のアンジェイだった。本来その役を演じるはずの俳優「彼」が時間になっても姿を見せなかったため、監督自ら代役を務めたのだ。監督をはじめスタッフ一同は「彼」の出演シーンを後回しにして、別のシーンの撮影をおこないながら「彼」が来ることを待っていた。そんなある日、出演女優のひとりで「彼」の妻であるエルジュベェタと、「彼」の元恋人で今はアンジェイ監督の妻であるベアタが、成り行きでドライブに出かけることになった。そして二人は道中、ラジオから流れて来たニュースで「彼」が列車事故により死亡したことを知る……。 アンジェイ・ワイダ監督が、彼の映画の俳優であり友人でもあったズビグニェフ・ツィブルスキの事故死をきっかけとして制作した私的な作品。ツィブルスキの事故をなぞるような物語、映画内映画、主なキャストの本名や愛称での出演など、虚実が入り交じった複雑な構造を備えている。

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