高層ビルが立ち並ぶ大都会の片隅に、売れない作曲家とその妻がつましく暮らす屋敷があった。その屋敷の庭の小さな草むらには、たくさんの昆虫たちが幸せに暮らしていた。ところが庭を囲っていた柵が壊れたために毎日人間たちが通り抜けるようになり、昆虫たちは危険にさらされる。長旅から帰って来たバッタのホピティは、そんな草むらの現状を見て愕然とする。人間が投げ捨てた煙草の火で火事が起こり、命が脅かされることもあった。ホピティは仲間たちを引き連れて近くの庭園に引っ越ししようとするが、スプリンクラーの猛威に襲われ引っ越しは失敗に終わる。そんな折、ホピティの恋人・ミツバチのハニーを横恋慕しようと企む意地悪なカブト虫・ビートルが、ハニーとの結婚を条件に、自分の住む安全な場所を他の虫たちの居住地として寄贈すると申し出る。さらにその提案が反故にならぬよう、ビートルの一味は作曲家が金を手に入れて柵を直すことができないように、作曲家宛ての小切手入りの手紙を隠してしまう。貧窮した作曲家はその土地を手放すことになり、昆虫たちの住処は高層マンションの建設予定地となってしまう。 都会的センスとスマートな作風でディズニーと双璧を成し、高畑勲、宮崎駿らにも大きな影響を与えたフライシャー兄弟の傑作。安易な自然礼賛、文明批判には陥らない爽快なラストシーンが、都会に生きる昆虫たちのたくましさを一層際立たせる。