本作は、1982年に制作されたビデオ・パフォーマンス作品「ア・イ・ウ・エ・オ・ン」（「コンセプトテープ3」（VHS）に抜粋版が収録されている）のリメイクで、存在する複数のバージョンのうち、もっともシンプルな構成を持つものである。まず、平仮名の「あ」という文字が表示され、続いてカメラと向き合った飯村自身が「あ」と発音する。その時——コンピュータによる映像処理によって——彼の顔は歪み、発声と口のかたちにズレが生じていく。続けて、「い」「う」「え」「お」「ん」、そしてアルファベットの「A」「I」「U」「E」「O」「NN」の順に、（「あ」の時と同様に）文字と、飯村がその文字を発声する映像が表示される。 このバージョンでは文字と発せられる音声の組み合わせは一致しているが、パフォーマンス、インスタレーション、インタラクティブ・アートなど、様々なかたちで展開される別のバージョンでは、組み合わせのズレや、スクリーンの複数化などによって、観客を混乱させるより複雑化した構成が試されている。

作品キーワード：ビデオ・アート