尾瀬に源流を持つ阿賀野川。本作は工場からの有機水銀の垂れ流しによる水俣病の発生した地域でもあるこの川筋に生きる人々の生活をとらえたドキュメンタリーである。80歳になってなお田に出る老夫婦、引退後数年ぶりに舟作りを手掛ける船大工、底抜けに明るい夫婦･･･。カメラは自然とともに生きる姿をほのぼのとした時間の中に見つめ、その裏にある公害病の後遺症と戦う苦難を垣間見せる。しかし、彼らの生き生きとした表情は時折その重さを忘れてしまう程である。特に老船大工が仕事場で見せる厳しい眼差しや、ほがらかに歌う老夫婦の表情は印象的である。制作スタッフは、4年間現地で農作業の手伝いなどをして、現地の生活に溶け込み、撮る側と撮られる側の壁を感じさせない仕上がりを見せている。 ニヨン国際ドキュメンタリー映画祭銀賞、サンダンスフィルムフェスティバルIN東京グランプリ、山形国際ドキュメンタリー映画祭優秀賞など多くの賞を受賞している。