母ネコとその3匹の子ネコが、川原で捨てられていた小さな子ネコを発見する。捨て猫は、その家族に引き取られてトラちゃんと名付けられ、他の子猫たちと共に育てられることとなったが、その中の1匹・ミケちゃんは、母親を奪われてしまったような気がして複雑な思いをしていた。ある日とうとう家出をしてしまったミケちゃんと、彼女を探しに来ていたトラちゃんは、嵐や雷に翻弄されたり、ニワトリに攻撃されたりしながらも、家に帰ろうと2人で力を合わせ危難をくぐりぬけていく。 政岡憲三が東宝教育映画部と契約して制作した「すて猫トラちゃん」シリーズの最初の作品。母猫と子猫たちの心情が細やかに描かれ、静かな感動を呼ぶ。そうした豊かなドラマ性の中にも、政岡憲三は実験精神を忘れることなく、子猫たちが石垣をよじ登るシーンでは、背景ごと180度回り込んで描くという驚異的なカットを披露している。