吾妻の都・馬具田の姫君に恋をした盗賊の団子兵衛。姫君の婿になるため、願い事を何でも叶えてくれるという宝珠を手に入れようと怪竜城へ向かう。その途上、怪馬人から雪の精を助けてやった団子兵衛は、その礼に怪竜城への案内を受ける。団子兵衛は無事宝珠を手に入れ都に帰るのだが、何と都は敵軍に攻められ、馬具田城は陥落寸前。団子兵衛は宝珠に味方の軍勢を出すように願い事をする…。 サイレント時代の洋画に併映された大藤信郎の第一作。元ネタは、前年に日本公開されたダグラス・フェアバンクス主演の映画『バグダッドの盗賊』。怪馬人のケンタウルスを思わせる西洋的なビジュアルや、雪の精の肌の露出の多さには驚かされる。 伝統的な江戸千代紙を衣装や背景にふんだんに取り入れた切り紙アニメーションで、その美しい模様が華やかさを彩る。この独自の「千代紙映画」を開拓した大藤信郎は、自ら設立した「自由映画研究所」を後に「千代紙映画社」と改名。しかし、千代紙は高価な上、画面ごとにその模様を合わせてアニメートするのは非常に困難な作業であった。そのためか、以降の切り紙アニメ作品のほとんどにおいて千代紙の使用頻度は低い。本作が一番ぜいたくに千代紙を取り入れた作品といえるだろう。