1973年3月20日。熊本地方裁判所は水銀を垂れ流したチッソに加害責任があるとして、水俣病患者たちへの慰謝料の支払いを命じる判決を下した。本作はこの判決後、引き続いて東京のチッソ本社で闘われた直接交渉の記録である。本作で初めてシンクロ録音が使用された。 熊本地裁の判決後、患者と支援者は、慰謝料だけでなく生涯の生活補償を求める契約書に署名するようチッソ本社へ要求する。しかし、チッソ側は敗訴によって追いつめられ、まるで被害者のように振舞いつつ、会社の資力の限界から慰謝料以外の支払い要求を呑むことが出来ないと主張する。固い表情を崩さないチッソの重役たちに対し、患者たちは水俣病によって狂わされた家族の人生や、今後重い障害とともに生き続けなければならない胎児性患者の子どもたちの未来を突きつけ「人の親として情のある対応を」と訴える。人間の尊厳をかけた交渉は患者とチッソが初めて対面した日から3カ月半もの間続いた。