安永2年（1774年）の冬、按摩の宗悦は雪の中、貸した金を取り立てに行くために旗本・深見新左衛門の屋敷へと向かった。しかし彼は、返済を断った上に逆上した新左衛門に斬り殺され、累ヶ淵（現在の茨城県常総市羽生町、鬼怒川沿岸）に捨てられる。深い恨みを残した宗悦は怨霊となって新左衛門にとり憑き、狂乱した新左衛門は妻を殺し、自らも累ヶ淵で溺死してしまうのだった。 それから20年の時が経った。新左衛門の息子である新吉は江戸の商家・羽生屋で働いていた。羽生家の娘・お久は新吉に惹かれていたが、彼女の小唄の師匠・豊志賀もまた新吉に想いを寄せていた。実は豊志賀は、かつて新吉の父・新左衛門に殺された宗悦の娘であったが、そのような因縁があることも知らない二人は愛し合い、同棲を始める。しかしある時豊志賀が顔に傷を負い、醜い容貌に変わってしまったことをきっかけに、新吉は心変わりしてお久のもとに通うようになった。豊志賀は嫉妬に狂って死に、怨霊となって新吉とお久を追いつめていく。二人は豊志賀から逃れるために駆け落ちをするが、何の因果か、向かった先はあの累ヶ淵であった……。 三遊亭圓朝による怪談噺『真景累ヶ淵』を原作として中川信夫が監督した怪談映画。長大な原作に対して、冒頭部「宗悦殺し」から「豊志賀の死」までが抜き出され、映像化されている。なお本作は短縮版で、当初は『怪談累ヶ淵』という題で公開されたが、そちらは現存していない。

作品キーワード：草刈り鎌