本作は、イギリスの実験映画作家ガイ・シャーウィンが、現実世界を記録した映像を、音に変換することを試みた四つの作品のうちのひとつである。彼は、ロンドン・フィルムメーカーズ・コーポレイティヴへと通じる鉄製の階段を、固定カメラで正面から、様々なスケールで撮影し、その映像をフィルムのサウンドトラック部分にも焼き付けることによって、階段のイメージの「音」を聴くことを実現させた。フレームに映り込む段数の多い引きのショットでは音声のピッチは高くなり、逆に段数の少なくなる寄りのショットではピッチは低くなる。シャーウィンは、そうした様々なピッチのショットを矢継ぎ早につなげていき、階段の映像が織りなす独特のリズムをつくりだすのである。