舞台は19世紀後半のロシア。純粋な心を持ち「白痴」と呼ばれるムイシュキン公爵は、首都ペテルスブルグへと向かう列車のなかで、彼と対照的な野蛮さと生命力を持つ男ラゴージンと出会い、不思議な友情で結ばれる。しかしペテルスブルグに到着後、退廃的なサロンに入った二人の前に、ナスターシャという女性が現れた。不幸な過去を持ち苦悩するその女に、ムイシュキンとラゴージンは虜になってしまう……。 ポーランドの映画監督アンジェイ・ワイダが、歌舞伎役者の坂東玉三郎とのコラボレーションを通じて制作した映画作品。ワイダは玉三郎のために、ドストエフスキーの名作『白痴』を原作とする自身の演劇作品『ナスターシャ・フィリポブナ』をつくり替え、玉三郎が運命の女ナスターシャとムイシュキン公爵の二役を演じ分ける挑戦的な公演を敢行（1989年、東京、ベニンサンピット初演）。さらにワルシャワ宮殿でのオールロケによって映画化が実現した。

作品キーワード：一人二役