ナチス親衛隊中佐でユダヤ人強制移送の専門家＝スペシャリストと呼ばれた男、アドルフ・アイヒマン。彼は潜伏先のアルゼンチンで捕らえられ、1961年に全世界が注視する中イスラエルで裁判にかけられ、20世紀最大の犯罪の一つであるユダヤ人絶滅作戦の共犯者として絞首刑に処せられた。この映画は、発見されたこの裁判の記録映像にデジタル処理を施し、独自の視点で編集を行った長編ドキュメンタリー作品である。 法廷でのドラマは、被告人アイヒマンにおける「悪の凡庸さ」の問題を中心に展開する。「民族の抹殺者、人類の敵」と激しく追及する検事長と、「自分はただ忠実に義務を果たしただけで、組織の歯車として働いた自分に責任はない」と弁明するアイヒマンとの応酬が繰り広げられる。ごく普通の人間が、なぜ数百万の人々の殺害の能動的共犯者になることができたのかに迫る。

作品キーワード：第二次世界大戦，戦争